vol.1
それはまるで、流れのない川底の、澱の中に潜んで傷を癒す得体の知れない生き物のよう。
野の草花の茎に生える繊毛を、逆撫でした時に刺さる細かい無数の見えないほどの小さな棘は、抜いても抜いてもなくならない。
普段は忘れてしまうほどの刺激でも、時々光が当たるとキラキラするから気付かされる。
そのキラキラ光る棘を触ると思いの外痛くって。
でも、光るから触らずにはいられない。
その痛みを伝える事が出来なくて、でも目に見えないから黙っていたら気付いてももらえない。
そうしてまた、澱の中。
出口のない、澱の中。
そんな事をしてても癒されることは叶わない。
叶わないことに気付いているのに。
繰り返し、繰り返し。
素直になれない。
出る方法がわからない。